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「その人らしく生きる」のをサポートする~安心できるかかりつけとして

更新日:2月14日

Naoko Mitori, RN, MSN, A-GNP-C


こんにちは、私はアメリカのロサンゼルス近郊の日系クリニックで、成人・高齢者のプライマリケアのナースプラクティショナーをしています。

アメリカで生活しているとどこへ行っても「あなたはどうしたい?」としょっちゅう聞かれます。例えばサンドイッチ屋さんでも、中身はもちろん、パン、チーズ、野菜、ドレッシング、香辛料もかなり多くの種類から選びます。住んでる人種もバックグラウンドも多種多様なこともあり、何事もカスタマイズが当然なのです。医療においても日本のような国民皆保険がなく、保険も医療機関も治療も自分で選ばないといけない状況では、いったい何が自分や家族にとって最善の選択なのか迷ってしまうのが当然です。ましてや言葉の壁がある場合、孤立してしまう可能性もあります。

私自身も初めて留学で渡米した時は、日本では当たり前のことがスムースに進まず、どこに電話してもたらい回し、予約も数ヶ月先まで取れないなどいろいろ苦労しました。

そこで私は今まで勉強してきた自分の知識や経験をここではマイノリティである日系コミュニティの人々の健康向上に役立ちたせたいと思い、こちらのクリニックで働くことにしました。

当院には、一般内科の外来診察部と内視鏡センター、健康診断部門があります。医師3名、NP3名が勤務しています。私は現在主に健康診断を担当しています。心がけているのは「アクセス」、「継続」、「カスタマイズ」というキーワードです。


アクセス

ロサンゼルスには、日本人永住者、日系企業駐在員家族、留学生、旅行者も多くいます。

その中には無保険の方、何十年も医療機関にかかってない方も多く、今まで一度もマンモグラムや子宮がん検診を受けたことがない40歳以上の女性もおられます。アメリカの医療、保健のシステムは複雑なので、身近なかかりつけとして、何かあったらまず相談できる存在として知ってもらうことが第一歩です。日本領事館、日系企業や学校などからご紹介して頂いたり、日系のフリーペーパーに広告を載せたり、年に一度の定期健診を勧めるコラムを書いて情報発信したりしています。

当院の健診の診察時間は一人30分枠で、まず座ってゆっくりお話します。問診で今までの病歴、生活習慣、健康観なども聞いた後に全身のフィジカルアセスメントを行います。それらを踏まえた上で必要な検査項目についてのリコメンデーション、その理由についてお話して、ご本人が納得された検査を行います。



そしてこの機会に予防の大切さ、異常の早期発見の方法(乳房自己検診法など)、どういう症状がある時は受診したらいいのかお話します。

アメリカは医療費が高いので、予防に力を入れています。ガイドラインで勧められいる検査(年に一回の血液検査を含めた健診、女性の子宮頸がん検診、40歳以上のマンモグラム、45歳以上の大腸カメラ、50’歳以上の男性のPSA(前立腺がん腫瘍マーカー)、女性の骨密度検査、50-80歳で20packyear以上の喫煙歴がある方の低線量胸部CTなど)は保険でカバーされます。予防接種もカバーされる種類が多いです。これを有効活用しない手はありません。


継続




そして健診後はやりっぱなしにせず、大切なのはフォローアップです。検査結果をメールで送った後にオンラインビデオ診察を行うようにしています。こちらも30分枠です。まず現在のご自身の状態を知ってもらうことが大切なので、結果について分かりやすく説明し、今後のマネージメントプランについてのディスカッションを行います。NPは薬の処方箋も書けますが、まず生活習慣を見直すところから始めます。セルフケアに目を向けてもらい、次の受診に繋げていきます。継続的なフォローアップは健康維持増進に欠かせません。リモート診察が不可能な方には結果に判定とコメントを添えたレポートを作成して送っています。また精密検査や専門医受診が必要な方には速やかに紹介し、その後もその結果を日本語で分かりやすく説明しています。PT/OT、カウンセラーや各種サポートグループへの紹介なども行っています。かかりつけNPは自分だけで解決しようとせず、さまざまなリソースへの橋渡し/交通整理も重要な役割です。


カスタマイズ

人々が病気を抱えながら生活していく上で、これが正しいという答えはありません。人それぞれ状況も違えば考えも優先事項も違います。医療者としての判断やリコメンデーションはお伝えしますが、必ずその方の意向を聞きながらオプションも提示します。その為にはこちらも常に知識、経験、コネクションのアップデートが必要です。患者さん本人が自分の状態を理解し、自分に合った治療を選択していくのをサポートしていきたいと思っています。その方がモチベーションも上がり、治療の継続もできます。

「わしゃ絶対今年は日本に行かんといけん、もう誰も知り合いがおらんようになるけーのー」と言われている80代の広島原爆被害者に心房細動が見つかりました。血栓のハイリスクとなる長距離フライトですが、心臓専門医と相談してなんとか無事に行けるように薬を調整し、経過観察中です。

また、70代で脳梗塞を発症して一旦入院したものの、飼っている老犬のお世話をする為にAMA(against medical advice:勧められる治療を自己責任で拒否する)フォームにサインして退院してきた患者さんがいました。もしかして病院での説明が十分ではなかったのでは?と思い、病院のレコードを全て取り寄せ、病状と治療の必要性、それを受けないリスクも全て日本語でご説明しましたが、それでも自分よりワンちゃんの事が心配で、入院なんてできないと言われました。家族が説得してもその意思は変わりません。そこで訪問看護、訪問PT/OTを手配しました。このように常に何がその方にとってベストなのか試行錯誤する毎日です。



私自身、やりたいことは全部やりたい性格です。人生いつ何が起こるか分かりません。楽しまないと損です。なので患者さんの希望はできるだけ叶えたいと思います。

APNとして働く魅力は、指示を待つのではなく、自分で判断して行動していけるので、責任もありますが、やりがいがあるところだと思います。成人、高齢者プライマリーNPとして、その方の人生の中での多様な変化を見届けながら、健康の維持増進とたとえ病気になっても安心して生活できるようにサポートしていきたいです。

最後になりましたが、患者さんに自分の意見を押し付けないと言いながらも、実際はこの仕事が好き過ぎて、ついティーンエージャーの娘に「ナースの資格だけでも取ってた方がいいよ!」と言ってしまい、「typical asian parent(典型的なアジア人の親)!」と言われてしまいました(笑)。私もまだまだ修行が必要なようです。


毎月一人もしくは二人。国内外で活動するAPNをリレー式で繋げていきます。1月は千葉県で訪問看護ステーションを経営するがん看護CNSの奥朋子さんです。お楽しみに!


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1 Comment


>APNとして働く魅力は、指示を待つのではなく、自分で判断して行動していけるので、責任もありますが、やりがいがあるところだと思います。

同じように私も思っています。自律部分が1番の醍醐味だと。もちろんそれに付随する責任は大きいけれど、だからやりがいもあるんですよね!

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