医療法人社団同行会 エマオ訪問看護ステーション所長
プライマリケアNP(診療看護師)
慢性疾患看護専門看護師
野島弘基
大学卒業からNPを目指すまで
私は大学卒業後、地元北海道にある80床程度の循環器専門病院に就職しました。就職の決め手は循環器を学べること、教育制度として就職3年目までに病棟・外来・ICU・救急検査室・手術室を回るローテーションシステムがあったことでした。大学でまずまず成績が良かった私は、同期7人の中でも看護師としてテキパキバリバリと働けると就職前は想像し働くことが楽しみでなりませんでした。しかし、働き始めると先輩から「大丈夫?」と声をかけられても分からないことが分からない、病室の入り口で立ち尽くし、患者の前へ行けないことが続き、リアリティショックを感じ、職業不適応状態の中で数か月間過ごしました。そんな中、先輩が交換日記を提案してくれました。交換日記の内容は看護技術から始まり、患者さんへの接し方、患者さんと私の会話からどう感じたか、どうすればよかったのかなど内省できる内容で振り返る機会を作ってくれました。内省を繰り返しながら目の前の問題や課題を整理していくという過程は私が高度実践看護師を目指す原点になったと感じます。厳しさの中にも愛がある先輩方のおかげで離職することなく、4年間勤務しました。
その後、他の領域の看護、特に集中治療を学びたいという思いが強くなり、大学病院のgeneral ICUに転職しました。始めての一人暮らしで不安はありましたが、東京での新生活、毎日が学びの連続でワクワクしながら日々過ぎていきました。
しかし、ある時から心筋梗塞や脳梗塞で運ばれてくる患者、がんが見つかって手術をする患者の看護をしていく中で、ふと感じました。大きな合併症を発症し亡くなる前や社会復帰ができなくなる前に1次予防、2次予防の観点からアプローチできないものだろうかと。そんな中、プライマリケアNP養成コースを知り、進学しました。大学院では慢性疾患看護の専門看護師の受験資格も一緒に取ることができたため、大学院修了後、2017年プライマリケアNP(診療看護師)、2019年慢性疾患看護専門看護師を取得しました。
NPとして
2017年、ご縁があり人口12,000人ほどの海町の診療所に就職し外来看護とみなし訪問看護(診療所付けの訪問看護室)でNPとして働き始めました。外来看護では、受け持ち患者さんをNPとして担当させていただき、診療計画を立て医師と協働しながら関わりました。一方、訪問看護は初めてでしたが、1件あたり30~60分と時間をとって患者さんとじっくり関われることは私にとって合っていました。病院看護師の時と比較すると、ドラマチックな病状の変化はなく、訪問看護ではどちらかというとゆっくり時間が流れ、救急受診や救急搬送しないような予防的な看護がメインとなります。私がやりたかったのは長い経過の中で利用者さんと関わらせて頂き、利用者さんとその家族の笑顔を守っていくことだと改めて強く感じました。
慢性疾患看護専門看護師として
NPとして重なる部分はありますが慢性疾患看護専門看護師として大切にしていることは、外来患者さん、利用者さんの尊厳を守れているかという視点です。管理者になる前と比べ、患者さん、利用者さんと接する機会は減りました。しかし、毎日のミーティングで利用者さんの情報共有を行うため、メンバーの言葉に耳を澄ましながら、看護方針やケアについて疑問に感じたときは、その疑問点について投げかけます。私自身の答えを最初から伝えるのではなく、メンバーと一緒に作り上げていくイメージです。当初と比べるとダイレクトケアをする機会が減り利用者さんから直接感謝の言葉を頂くことも少なくなり寂しい気持ちになった時もありました。しかし、スタッフの感謝の言葉を利用者さんから直接いただくと私自身も嬉しくなるという気持ちの変化がありました。
管理者として
就職して2年目、院長から訪問看護ステーションへ移行したい、ステーション所長を今いるメンバーから選びたいと話がありました。看護師みんなで話し合い、なぜか私に白羽の矢がたちました。その時はNPに専念したいという気持ちが強く、私でいいのかと感じましたが、何事も挑戦かなと引き受けることにしました。
理念の作成
所長として最初に取り掛かったのは、理念の作成でした。院長、周りの看護師と話し合いを重ね、理念は「利用者、家族、地域住民、スタッフすべてが笑顔に」に決定しました。私一人で大切にしてきた看護をチームメンバーと協働しながら組織全体で叶えていく。利用者さんから感謝の言葉を頂き、みんなで笑顔を花のように咲かせていくことに喜びを感じる時もあれば、時に問題が生じ、課題としてどう解決していくのか頭を悩ませることもある。この理念は私自身のAPNとして活動していくビジョンともなりました。
人をどう動かすか
管理者として知識や経験もなく、管理者の先輩もいなかった私は独学で勉強をしました。看護管理の本の他にビジネス書であるリーダーシップ、マネジメント、組織論、人材育成などのテーマの本を読みました。知っていることと出来ることは違い、この差を埋めていくのは今でも苦労しています。これを他のメンバーが出来るようにしていくにはさらに難しいと感じます。しかし、長い年月はかかりますが、理念やその目的をメンバーへ説明していくと、理解し、行動に変わるときがあります。関わる人すべてが笑顔にできるよう変化があった時、やりがいともなり、心から嬉しく思います。
その他、経験で学んだことがありました。管理者になる前はNPとしてこれをすると利用者の満足度、チームの看護の質を上げることができると思い、上司へプレゼンテーションしましたが、うまくいかないことがありました。しかし、管理者になってからは経営的な面からそれをすることでどれだけペイできるのか、コストパフォーマンスを意識するようになりました。何かプロジェクトを立ち上げたいとき、NPとして自分のやりたいことだけではなく、管理者や組織法人全体としてどんなメリットがあるかを考えて交渉できるようになったことは、NPとして活動していく中でも幅が広がっています。
最後にプライマリケア診療看護師として慢性疾患看護専門看護師として管理者として活動していくに当たり、不器用な私ではありますが利用者さんそしてスタッフを含めたすべての地域住民が笑顔になれるよう、日々努力していきたいと思います。
写真は最近旅行で行った沖縄の海の写真です。マナティを見て癒され、白い砂浜と青い海を見て、何も考えない時間も大切だなとリフレッシュでき、笑顔になって帰ってきました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
皆様の周りにもたくさんの笑顔の花が咲くよう願っています。
いかがでしたでしょうか?来月は米国カリフォルニア州で働かれている受毛NPです。お楽しみに!
私は自分には管理者は絶対無理!と逃げ出した人間なので、二足?いえ三足のわらじを履いている野島さんを尊敬します!