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縁 ~つながりから生まれる力~

`国立大学法人 鹿児島大学病院

救急・集中治療科

診療看護師(NP)

岸良 達也



はじめまして。鹿児島大学病院の救急・集中治療科で診療看護師(NP)として働いております、岸良達也と申します。

このたび、APN後援会のコラム執筆という貴重な機会をいただき、とても嬉しく思っています。

これまでのコラムには、経験豊富で尊敬する先輩方の歩みや思いが綴られており、その中に私の文章を加えていただくのは少し気恥ずかしくもあります。けれども、私自身の体験が、ほんのわずかでも皆さまの参考になれば幸いです。


【NPを志すきっかけ】

私は看護師免許を取得後、東京・御茶ノ水にある大学病院のICUで5年間勤務しました。

都会の真ん中で、最先端の医療が当たり前に提供される環境でした。その5年間で多くを学び、当時は集中ケア認定看護師になりたいと考えていました。

その後、地元・鹿児島へ戻り、鹿児島大学病院のICUに入職しました。まだ着任して間もない頃、忘れられない出来事があります。離島からドクターヘリで搬送されてきた方を担当した時のことです。その方は数日間、腹痛を我慢し続けていました。ようやく近医を受診したときには、すでに胆嚢炎による敗血症性ショックに陥っており、緊急搬送されてきたのです。「症状があったのに、なぜもっと早く受診しなかったのだろう…。」そう思いながら情報収集を進めるうちに、その疑問は“受診したくてもできない環境”に行き着きました。

「御茶ノ水にいれば、急病で倒れても助かる」と言われるほど医療が身近な都会。しかし鹿児島では、島やへき地に住む人々にとって、医療は決して近いものではありませんでした。その現実を目の前に突きつけられ、衝撃を受けたことを今でも鮮明に覚えています。

離島・へき地から運ばれてくる患者さんは決して少なくありません。その一人ひとりに触れるたび、鹿児島の医療の課題を実感しました。プライマリ・ケアの理念のひとつに「Accessibility(近接性)」がありますが、このような地域だからこそ、NPの存在が必要なのではないか。そう考えるようになりました。この気づきが、私がNPを志す大きなきっかけとなりました。


【NP資格取得後:苦悩からの転機】

診療看護師(NP)の資格を取得後、私は鹿児島大学病院に戻りました。各診療科で研修ができるよう交渉し、実際にローテートを行いましたが、診療科によってNPの認知度や理解度はさまざまで、思うように研修が進まないこともありました。また、大きな組織であるがゆえに、NPに関する規則やシステムの整備も容易ではなく、研修の終盤には「これからどうしていくべきか」と真剣に悩む日々が続きました。

そんな時、ひとつの大きな出会いがありました。

大阪でNPとして活躍されていたFさんが、鹿児島県内の病院に就職されると知り、思い切って連絡してみました。すぐにご返信いただき、初めてお会いしたその日から意気投合しました。以来、NPとして活動する上での悩みをたくさん相談させていただきました。知的かつ戦略的に物事を考えるFさんから学ぶことは多く、「一緒に働こう。」とも声をかけていただきました。大いに心が揺れましたが、「鹿児島大学病院を辞めるなら、やり切ってからにしよう」と思い直すきっかけとなりました。

長年お世話になっている救急・集中治療部の教授に相談したところ、「君が辞めるなんて、もったいない。バックアップするから一緒に頑張ろう。」と、励ましのお言葉をいただきました。その一言に支えられ、教授という立場の信頼をお借りしながら、歩みを進めることができました。その過程では、さまざまな部門長の方々に直接交渉を重ね、時には心が折れそうになることもありました。それでも、教授の力強い後ろ盾と、Fさんの存在に励まされ、少しずつ鹿児島大学病院にNPの仕組みを整えていくことができたのだと思います。私にとって、このFさんとの出会いと教授の支えは、私のNP人生において大きな転機となりました。

Fさんは現在、新たな挑戦のため鹿児島を離れていますが、いまでも困ったときには相談に乗ってくださいます。こうしたつながりに恵まれていることに、心から感謝しています。

NPは、日本の医療界ではまだ数少ない存在です。だからこそ、このような“横のつながり”が大きな力になるのではないか――そう実感しています。


【鹿児島NP研究会の発足】

私が鹿児島に戻ってきた2020年頃、県内の診療看護師(NP)は10名に満たず、同じ施設で働く方を除けば、「名前は知っている」程度のつながりしかありませんでした。NPとして活動していく中で直面する悩みや課題を率直に話し合える場、そしてNPを目指す方々へ情報を届けられる機会が必要ではないか。そう考え、2023年より「鹿児島NP研究会」を年1回開催しています。

初回となった2023年は、各施設での活動の実際を共有しました。2024年にはその発表に加え、「診療看護師(NP)がおさえておきたい敗血症の病態と治療」というテーマで、当院の救急・集中治療部の教授にご講演いただきました。臨床に直結する学びと、同じ立場だからこそ語れる体験が交わり、参加者それぞれが自分の活動を振り返るきっかけになっているように感じます。

2025年の企画も現在進行中です。詳細はまだお伝えできませんが、きっとまた「集まって良かった」と実感できる時間になるはずです。ぜひ多くの方に、この場の空気を感じていただければと思います。




【鹿児島から発信するNPの可能性】


現在、救急・集中治療科の診療看護師(NP)として活動する一方で、日本看護協会と協働し、離島やへき地の医療課題に取り組む事業にも参画しています。2023年には十島村の診療所で数週間勤務し、現地での医療を体感しました。そして2025年現在は、鹿児島県内のある地域を対象とした事業に携わっています。折を見て、皆さまにご報告できればと思います。

改めて実感するのは、鹿児島のように有人離島や山間部を多く抱える地域にこそ、NPの存在が不可欠だということです。誰もが「住み慣れた地域で最期まで過ごしたい」と願うものです。しかし現実には、医療体制の不足によって、その思いが途切れてしまうこともあります。NPの存在がもっと増えていけば、地域で担える役割はさらに広がり、地域医療を支える大きな力へとつながるのではないかと思います。

鹿児島は、地理的に「日本の片隅」と形容されるかもしれません。しかし、その片隅からこそ、新しい医療の在り方を発信できると信じています。これからもNPの重要性と可能性を、鹿児島から全国へ届けていきたいと思います。


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